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2008年05月04日

与謝野馨『堂々たる政治』を読みました

新幹線の車中で最近出た与謝野馨 元官房長官の『堂々たる政治』を読みました。

与謝野さんは私が尊敬する政治家の一人です。
大学時代、私は東京1区に住んでいたので与謝野さんの選挙区でした。衆院選挙では与謝野さんに入れたいところでしたが、当時から私は民主党支持でしたので民主党の海江田さんに投票。どうせ勝てないだろうと思っていたら僅差で海江田さんが勝ち、与謝野さんは落選。「大変なことになった…」とビックリしたことを覚えています。

内容としては

第1章 30日間だけの官房長官
「麻生クーデター説」の裏舞台の話、安部さんの辞任に対する考え、官房長官という仕事に対する考えなどが書かれています。
印象的な部分としては、

・中曽根、梶山、後藤田などの政治家に共通しているのは「戦争は悲惨である」「軍部が威張った戦前の体制は嫌だ」「国家権力が過度に個人の生活に介入してはならない」という価値観である

という点。全て同感です。


第2章 奇道の政治、小泉元首相の遺産
小泉政治の総括を与謝野さんなりにしていますが、興味深いのは

・郵便局が民営であろうと公営であろうと国民生活を決定的に変えるものではないにも関わらず、国民以上に政治家が天下の一大事だと思ってしまった。ワンテーマでここまで差がつく小選挙区制度は危険に思えてならない
・日本人が熱狂の中で決めたことは大抵間違っている
・小泉さんによって世論主導型政治が始まったが、小泉さんのように世論を引っ張れるカリスマ性のあるリーダーでなければ、世論に引っ張られるだけの政治になってしまう
・世論調査の数字は本当に国民の声とイコールなのか

といったあたりでしょうか。
私も以前「この国には小選挙区制による二大政党制はそぐわないのではないか。4〜6程度の政党の組み合わせによる政権選択が可能な中選挙区制度も否定するものではない」と日記に書いたことがあります。日本のように衆院候補者が選挙区の主になるような政党の体制では小選挙区制度にすると新人が出にくくなり、いずれ硬直化してくる可能性があります。


第3章 国家感なき市場原理主義の危険
私は本書の最大のテーマはここだと思っています。
与謝野さんは小泉構造改革後、出てきた市場原理主義に対して「市場原理主義というものは欧米でも主流ではなく、実体経済を知らない頭でっかちな一部の人たちが信奉しているに過ぎない」とバッサリ切り捨てます。

そして、小泉構造改革とは実態は何もなく、小泉さんが「改革」と叫び続けることで民間が「政府に頼ってはいけない。自分たちで何とかしなければ」と思わせた意識改革こそが小泉改革の最大の仕事だと評価します。

私も政治の中にいて口を開けば「民間は…」という人に正直辟易しているクチです。
私も民間出身ですから行政を見て民間の手法を導入すべき部分を感じることは多々あります。しかし、行政には民間ができない・しない部分を引き受けなければならない責務があり、一概に民間の論理で進めることが危険なケースもあります。その見極めができない人が意外と多くいることに私は驚きました。感覚ですが、実態経済に関わってこなかった政治家ほどそういう傾向があるように感じます。


後半部分は与謝野さんの政治人生の回想と、政治家は大局的な判断をしなければならないこと、そして与謝野さんの持論である増税論が書かれています。
全てに首肯できるわけではありませんが、媚びない堂々たる主張だと思います。

平易な文章で書かれ、1時間もあれば読みきってしまう軽い内容の本なので、興味のある方は一度読んでみることをオススメします。
posted by 熊谷としひと at 21:53| 千葉 ??| Comment(5) | TrackBack(0) | 政治・経済・歴史
この記事へのコメント
 小泉さんが郵政民営化を言い出したのはおよそ20年近く前。彼が郵政大臣のときだったような。そのとき誰も理解できず、小泉さんは何故銀行の味方をするのかという論調だったと思います。
 郵政問題は郵便問題でなく、誰も責任をとらない郵便貯金を湯水のようにつぎ込む財政投融資の問題だったのです。私はその後、不動産の仕事をしていたので、こんな金融公庫の金利で一体だれが責任をとるのかと思ってました。その後もマスコミはこの財政投融資問題をとりあげず、郵便事業を取り上げるように思います。
一番大きな問題にふれないのです。

 小泉改革は私は改革だったと思ってます。
小泉改革は何ももたらさなかったなどという言い方がよくされますが、それは認めたくないからわざわざ言ってるか、別の意図があって言ってるのだなあと思います。

 いろんなところが独立行政法人になり、少しは競争原理が導入されました。

 そして今年やっと郵政が民営化になりました。

 今度私の職場と合併する部門があるので、変化を目の当たりに見られるのが楽しみです。こっちは不動産関係ではありません。

 行政改革はまだ道半ばだと思ってます。

 ロンドンの友人によるとコミセンの部屋を借りるときは2時間5000円くらいの使用料を払います。日本では授業料をとってる人が既得権のように無料で優先的に使っています。
 こんな不公平ありですか?
 それでいて、公民館は電球一つも買うお金がなかったりするのです。
 コミセンや公民館の使い方という身近なところからくまさんには改革していただきたいです。
 
 
Posted by K at 2008年05月05日 01:07
kさんのおっしゃるとおりです。

長くなるので省きましたが、この本の中でも郵政民営化の一番のインパクトは莫大な金融資産が市場に出ることだと書かれています。
郵政民営化のその後を追うマスコミの報道では殆どが郵便局で、その金融資産が市場にどのような影響を与えているかを取り上げたケースは少ないですね。

小泉改革を否定するのではなく、改革は改革として進め、その影で発生する弱者に対するセーフティネットをどう構築していくのかが問われているのだと思います。

コミュニティセンター、公民館については今後調査して取り組んでいきたいと思います。
ご意見ありがとうございます!
Posted by 熊谷としひと at 2008年05月05日 08:43
金融資産が市場にでることが問題ではありません。
郵便貯金が財政投融資というかたちで国に無防備に使われているのが問題なのです。

今は公団でなくなったところや公庫などに貸付てますが、逆ザヤが出たときに誰も責任をとらないかたちです。
結局は税金で穴埋めすることになるのがわかってるのに、大事な国民の資産を湯水のように使って平気でした。

この逆ザヤは多分国債というかたちで埋められているでしょう。
国民資産は1200兆、そのうち3分の一くりが郵便貯金と言われましたが、国公債の発行額は今いくらでしょう?

国の赤字は特別会計をいれると1100兆円はあるでしょう。

国会で議論されない特別会計について調べてみんなに教えてください。

折角の資産をつまらない外国への投資で大損をして資産をなくしてばかりのような気がします。一生懸命働くばかりで。

だいたい日銀のゼロ金利なんてバカな政策もええ加減にせいと思ってましたわ。
Posted by K at 2008年05月06日 20:50
堂々たる政治、面白そうですね。

最近法律の本しか見てないので、気分転換がてら手にとってみてみようと思います。
Posted by けん at 2008年05月06日 23:11
>Kさん
財政投融資の問題は小泉さん自身も郵政民営化の理由の一つとして当時から結構クローズアップされていましたね。
特殊法人などはこの財政投融資によって資金が安定的に供給され、結果放漫経営が行われたことは事実です。
民営化されたことで今までは財政投融資や国債などにあてられていた資金が一体どこに向けられるのか、資産規模的には相当大きなものがありますのでマーケットにも影響を与えます。

>けんさん
コメントありがとう!
気分転換で読める内容の本なので法律勉強の息抜きにどうぞ。
Posted by 熊谷としひと at 2008年05月09日 07:14
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